皮膚の赤み、痛み、かゆみなどの症状を和らげる薬剤の1つに、非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の塗り薬があります。
この薬剤は、副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)と比較されることが多いですが、その違いを正しく理解している方は少ないかもしれません。
この記事では、非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の効果や副作用を中心に、処方薬と市販薬の具体的な製品例を紹介していきます。
副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)との違いについても理解を深め、正しく使用できるようにしましょう。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の塗り薬とは
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の塗り薬には、コンベックやスタデルムをはじめとする様々な製品があり、軟膏やクリームなど用途に応じた剤型を選ぶことができます。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の効果
痛みや炎症は、体内の酵素「シクロオキシゲナーゼ」がプロスタグランジンを生成することで引き起こされます。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)は、この酵素の働きを阻害することで痛みや炎症を緩和します。
また、血小板凝集の抑制や肉芽増殖の抑制といった作用により、皮膚の赤みや痛み、かゆみなどの症状も軽減されます。
このため、非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)は主に急性湿疹やアトピー性皮膚炎、酒さ様子皮膚炎、ニキビとも呼ばれる尋常性ざ瘡などの治療に使用されています。
副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)と比較すると効果はやや弱いと言われることもありますが、皮膚の薄い部分にも使用できるのが特徴で、ステロイドの吸収率が高く副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)の塗り薬を使用しにくい顔や首、陰部の皮膚疾患に対して用いられたり、帯状疱疹の治療に使用されたりします。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の用法・用量
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)のスタデルムを例に挙げると、帯状疱疹には1日1~2回適量をガーゼに取り患部に貼付し、急性湿疹やアトピー性皮膚炎、酒さ様皮膚炎などに対しては1日数回患部に薬剤を塗って使用します。
また、尋常性ざ瘡にはクリーム剤しか適応がない点に留意して、石鹼で洗顔した後に1日数回塗布するようにしてください。
顔の皮膚炎の治療に使用する際は、目に入らないように注意しなければなりません。
万が一目に入ってしまった時は、すぐに水で洗い流し、違和感がある場合にはすぐに医療機関を受診しましょう。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の副作用
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の副作用として、以下の症状が報告されています。
- かゆみ
- 刺激感
- 長期使用による過敏症(稀に発症)
過敏症による接触皮膚炎の報告もあるので、身体に異変を感じた時は速やかに医療機関を受診しましょう。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の禁忌
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)は過敏症の方は禁忌です。
妊娠中に非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)を使用したことで胎児動脈管収縮を引き起こしたという報告があることから、妊娠中は有用性がリスクを上回る場合にのみ使用します。
これらに加えて、授乳中の方や高齢者は副作用のリスクが高いために注意して使用する必要があります。
また、相互作用の影響がある薬剤については説明書に記載はありませんが、思わぬ副作用を防ぐためにも、併用したい薬剤がある場合には医師や薬剤師に相談してください。
非副腎皮質ホルモン薬と副腎皮質ホルモン薬の違い
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)と副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)の大きな違いは、体内において作用する物質が異なることと適応です。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)は、シクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害し、炎症や痛みの原因となるプロスタグランジンの生成を抑えます。
一方、副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)はプロスタグランジンを生成する前に作られるアラキドン酸の生成自体を抑制するため、 非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)よりも効果が強いとされています。
また、適応症も異なります。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)は、尋常性ざ瘡など、副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)の使用で悪化する恐れがある皮膚疾患に使用されます。
それに加えて、免疫力低下によって症状が悪化しやすいヘルペス感染症やカンジダ症、細菌感染が疑われる傷などにも副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)は使用しません。
一方、アトピー性皮膚炎の治療では副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)が第一選択とされることが多いですが、副作用への懸念や患者さんの希望に応じて、非ステロイド薬が選ばれることもあります。
たとえば、近年登場したコレクチム軟膏は、アトピー性皮膚炎を改善する作用があるとされていますが、それでも副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)よりも効果はやや劣るとも言われています。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の塗り薬一覧
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の塗り薬には、成分や剤型が異なる薬剤が複数存在しています。
ここではいくつかの非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の製品を具体的に紹介していきます。
スタデルム
スタデルムは有効性イブプロフェンピコノールが配合された非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の処方薬で、先発医薬品には鳥居薬品のスタデルム軟膏5%とスタデルムクリーム5%、久光製薬のベシカム軟膏5%とベシカムクリーム5%がありますが、後発品はありません。
軟膏もクリームも急性湿疹やアトピー性皮膚炎、帯状疱疹などの疾患に適応がありますが、尋常性ざ瘡についてはクリームのみが適応です。
有効成分イブプロフェンピコノールが配合された市販薬には、イブプロフェンピコノールが単体で含有されている久光製薬のフレッシングアクネクリームや、イソプロピルメチルフェノールやアラントインが一緒に配合されたロート製薬のメンソレータムアクネス25メディカルクリームEXaなどの商品があります。
どちらの薬剤もニキビ治療薬として、炎症を抑えたりアクネ菌の作用を抑制したりする効果が期待できます。
コンベック
有効成分ウフェナマートが配合された非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の処方薬には、田辺三菱のコンベック軟膏5%とコンベッククリーム5%、ヴィアトリス製薬のフエナゾール軟膏5%とフエナゾールクリーム5%があります。
これらは先発医薬品であり、後発品はありません。
コンベックは急性湿疹やアトピー性皮膚炎の他に、脂漏性湿疹やオムツ皮膚炎などにも適応があり、局所皮膚刺激がほとんど見られないことから子どもでも使用しやすい薬剤と言えます。
有効成分ウフェナマートは他の成分と配合された市販薬が多く、ジフェンヒドラミンが一緒に配合された小林製薬のキュアレアaは顔のかゆみ止めの薬、ロート製薬のメンソレータムカブレーナやライオンのメソッドUFクリームは陰部のかゆみ止めの薬です。
他にも有効成分リドカインと一緒に配合された佐藤製薬のトレンタムGクリームなども市販されています。
アズノール
アズノールはハーブのカモミールを水蒸気蒸留することによって得られる有効成分ジメチルイソプロピルアズレン軟膏を主成分とした副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)で、アズノール軟膏0.033%という処方薬があります。
これまで紹介してきたスタデルムやコンベックとは効果が少し異なり、痛みやかゆみを抑えるのに加えて傷の治りを促す効果もあるうえに副作用も少ないことから、広範囲の皮膚疾患や長期間塗布するようなケースで使用されます。
ただし、それぞれの症状に特化した塗り薬と比較すると、アズノール軟膏はやや効果が弱いとされています。
アズノール軟膏は新生児から使用できて、口や陰部の粘膜に入っても問題ない薬剤のため、子どものオムツかぶれやあせもなどに用いられることが多いです。
しかしながら、目に入れてはいけないので、顔に使用する時には十分注意してください。
有効成分ジメチルイソプロピルアズレンが単独で配合されている市販薬はありませんが、他の成分と一緒に配合されている商品であれば、薬局やドラッグストアで購入できます。
日邦薬品工業のタナールAZ軟膏はアラントインとグリチルリチン酸二カリウムが一緒に配合された薬剤で、皮膚炎やかぶれなどに効果を発揮します。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の塗り薬は湿疹の治療薬
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の塗り薬は、副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)以外の成分を含む外用薬で、皮膚の赤みや痛み、かゆみなどを和らげる効果があります。
湿疹やアトピー性皮膚炎などに適応があるほか、免疫力を低下させる副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)が使えないヘルペス感染症やカンジダ症、ニキビとも呼ばれる尋常性ざ瘡の治療に用いられます。
それに加えて、ステロイドの吸収率が高い顔や首、陰部などの皮膚の薄い部分にも使用しやすいのも非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)の特徴です。
ただし、アトピー性皮膚炎などに対しては、非副腎皮質ホルモン(非ステロイド薬)の塗り薬の方がやや効果が劣ることが多いとも言われています。
非副腎皮質ホルモン薬(非ステロイド薬)と副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬)は、それぞれにメリット・デメリットがあるため、用法・用量を守って正しく使用し、病気の治療に努めていきましょう。