副腎皮質ホルモン外用薬として皮膚の治療に使用するステロイド軟膏について「副作用が怖い」「長期間使用すると身体に悪い」といった悪いイメージばかりをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら、副腎皮質ホルモン外用薬は湿疹や皮膚炎などの皮膚疾患の治療において欠かすことのできない薬剤の1つです。

今回は副腎皮質ホルモン外用薬の商品ごとの強さランキングやその使い分けについて解説していきます。
最後には皮膚疾患における副腎皮質ホルモン外用薬の正しい使い方と、使用してはいけない例を紹介します。

副腎皮質ホルモン外用薬とは

副腎皮質ホルモン外用薬は、体内の副腎で生成される「副腎皮質ホルモン」という成分を配合した薬剤で、ステロイド骨格を有することから「ステロイドホルモン」とも呼ばれます。
副腎皮質ホルモンには内服薬と外用薬の2種類があり、湿疹や皮膚炎などの治療には、主に軟膏などの塗り薬が使用されます。
症状が重い場合には、内服薬を併用することもあります。

副腎皮質ホルモンに関して話題に上がる副作用の多くは、内服薬や点滴を長期間投与した場合に見られるものです。
軟膏などの外用薬を使用する分には、過度に心配する必要はありません。

ただし、副腎皮質ホルモンに限らず、どんな薬剤であっても副作用はあります。
用法・用量は正しく守り、万が一身体に異常が現れた場合には、速やかに医療機関を受診してください。

副腎皮質ホルモン外用薬の強さランキング

副腎皮質ホルモン外用薬の強さは大きく5段階あり、弱い方からウィーク・マイルド・ストロング・ベリーストロング・ストロンゲストに分類されています。

このうち、ウィーク・マイルド・ストロングの3種類は一部が市販されており、薬局やドラックストアでも購入可能です。
ベリーストロング・ストロンゲストの2種類は処方薬としての取り扱いしかありません。

ウィーク：弱い

副腎皮質ホルモン外用薬の中で最も効果が穏やかとされるウィークに分類されるのがプレドニン目軟膏です。
有効成分プレドニゾロン酢酸エステルが配合された薬剤で、目の腫れや赤み、かゆみなどを改善する作用があり、結膜炎や眼瞼炎といった外眼部と前眼部の炎症性疾患の対症療法薬として用いられます。

マイルド：穏やか

マイルドは、副腎皮質ホルモン外用薬の中で2番目に効果が穏やかなカテゴリーで、以下の薬剤があります。

• リドメックス（プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル）
• レダコート（トリアムシノロンアセトニド）
• アルメタ（アルクロメタゾンプロピオン酸エステル）
• キンダベート（クロベタゾン酪酸エステル）
• ロコイド（ヒドロコルチゾン酪酸エステル）
• オイラゾン（デキサメタゾン）

ロコイド軟膏は、皮膚の薄い顔や陰部に起きた皮膚疾患の治療や、小さな子どもに対して使用されることが多い外用薬です。
ロコイド軟膏と全く同じ外用薬は市販されていませんが、同じ成分のヒドロコルチゾン酪酸エステルを含む薬剤であれば薬局やドラッグストアで購入できます。

また、お薬ネットでは、ロコイドのジェネリック医薬品ロコダームを通販で購入することが可能です。
ロコダームはロコイドと同じ成分が同じ割合で配合されている薬剤です。
病院に通うのが難しい場合には、どうぞお気軽にご利用ください。

ストロング：強い

3番目に強いストロングに分類される副腎皮質ホルモン外用薬は、以下の通りです。

• エクラー（デプロドンプロピオン酸エステル）
• メサデルム（デキサメタゾンプロピオン酸エステル）
• ポアラ（デキサメタゾン吉草酸エステル）
• ペラクシン（ベクロメタゾンプロピオン酸エステル）
• リンデロン（ベタメタゾン吉草酸エステル）
• フルコート（フルオシノロンアセトニド）

リンデロンには、リンデロンVとリンデロンVGがあり、リンデロンVはベタメタゾン吉草酸エステルが単体で配合されているのに対し、リンデロンVGにはベタメタゾン吉草酸エステルに加えてゲンタマイシン硫酸塩が配合されているのが特徴です。

抗炎症作用があり、炎症による皮膚の痒みや腫れ、赤みなどを改善することから、湿疹や虫刺されといった疾患の他に、円形脱毛症や熱傷、痔核などにも使用されます。
剤型も軟膏やローション、クリームがあり、部位や皮膚の状態に応じて選択することが可能です。

ベリーストロング：非常に強い

2番目に強いベリーストロングに分類される薬剤は、以下の通りです。

• フルメタ（モメタゾンフランカルボン酸エステル）
• アンテベート（ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル）
• トプシム（フルオシノ二ド）
• リンデロンDP（ベタメタゾンジプロピオン酸エステル）
• マイザー（ジフルプレドナート）
• ビスダーム（アムシノニド）
• ネリゾナ（ジフルコルトロン吉草酸エステル）
• パンデル（酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン）

例えば、アンテベートは湿疹や乾癬、薬疹などに加え、円形脱毛症やケロイド、水泡症などの治療に使用します。
これらベリーストロングに分類される薬剤はすべて処方薬の取り扱いとなり、薬局やドラッグストアでは購入できません。

ストロンゲスト：最も強い

1番強いストロングに分類される副腎皮質ホルモン外用薬は、以下の通りです。

• デルモベート（クロベタゾールプロピオン酸エステル）
• ダイアコート（ジフロラゾン酢酸エステル）

デルモベートには、軟膏とクリーム、スカルプローションといった剤型があり、乾癬や肉芽腫症、悪性リンパ腫などの重い皮膚疾患に使用します。
これらストロンゲストに分類される薬剤もすべて処方薬のみの取り扱いのため、市販薬はありません。

副腎皮質ホルモン外用薬の強さによる使い分け

処方薬の副腎皮質ホルモン外用薬を使用する場合は医師の指示通りで問題ありませんが、市販薬の副腎皮質ホルモン外用薬については年齢や塗布する部位によって薬剤を使い分けることが必要となります。

年齢による使い分け

副腎皮質ホルモン外用薬は年齢によって強さを変えることで、思わぬ副作用を防ぐことが可能です。
2歳未満の赤ちゃんであればウィークを、幼児～小学生くらいの子どもであればマイルドを選択するとよいでしょう。
中学生以上になれば、皮膚のバリア機能が大人と同じくらいに整うことから、ストロングを使用することができます。

しかし、副腎皮質ホルモン外用薬の効果の現れ方は個人差があるのも事実です。
特に月齢の低い赤ちゃんに関しては、副作用を避けるためにも自己判断で市販薬を使用するのではなく、医療機関で薬剤を処方してもらうことをおすすめします。

部位による使い分け

皮膚の部位によって副腎皮質ホルモン外用薬の吸収率は大きく異なり、皮膚の薄い部位に塗布する時は通常よりも薬剤の作用が強くなるため注意が必要です。
前腕の内側の吸収率を1とした時、皮膚の薄り陰部は42.0、頬や顎は13.0、前頭は6.0と何倍～何十倍以上も吸収率が高いことから、通常よりも1ランク弱い薬剤を選択するとよいとされています。

また、皮膚の薄い部位では薬剤の強さだけでなく、塗布する期間にも注意しましょう。
処方薬の副腎皮質ホルモン外用薬であれば、顔や首、陰部は約2週間、その他の部位は約4週間とされていますが、市販薬の場合には5～6日使用しても症状が改善されない時には薬剤が合っていない可能性もあるので医療機関を受診してください。

副腎皮質ホルモン外用薬の注意点

副腎皮質ホルモン外用薬は皮膚疾患に高い効果を示す反面、間違えた使い方をすると症状が悪化したり、思わぬ副作用を招いたりすることがあります。

まず、副腎皮質ホルモン外用薬には免疫力を低下させる作用があるため、細菌や真菌などに感染したニキビや水いぼなどに使用すると症状が悪化してしまいます。
皮膚疾患に副腎皮質ホルモン外用薬を約1週間使用しても症状が改善しないような時には、感染症による皮膚疾患の可能性があるので医療機関を受診しましょう。

一方で副作用を恐れて塗布する量や回数を減らすこともやめてください。
薄く塗ると塗りムラによって十分な薬剤の効果が得られず、治療期間が長引いてしまう可能性があります。

副腎皮質ホルモン外用薬は、人差し指の先端から第一関節までに出した軟膏を大人の手のひら2つ分の面積に塗るのが適量とされており、それを朝夕の1日2回塗布するのが基本です。
ただし、医師からの指示がある場合はそれに従ってください。

副腎皮質ホルモン外用薬の強さは年齢や部位によって使い分ける

副腎皮質ホルモン外用薬には、ウィークからストロンゲストまでの5段階の強さがあり、その中に様々な成分を使用した商品があります。
市販で薬剤を選ぶ際には、副作用を避けるためにも、年齢と塗る部位によって薬剤を使い分ける必要があります。

2歳未満の赤ちゃんにはウィーク、幼児から小学生にはマイルド、中学生以上はストロングを選択するのを基準とし、それに加えて皮膚の薄い頭や顔、陰部などの薬剤の吸収率が高い部位には基準よりも1ランク弱い薬剤を選んでください。

ただし、副作用が怖いからと薬剤の量や回数を減らすことは症状を長引かせることに繋がります。
副腎皮質ホルモン外用薬を使用する時には、医師による指示や説明書に記載されている量・回数を正しく守るようにしましょう。