ロイコトリエン受容体拮抗薬とはどんな薬?アレルギー予防薬としての役割と作用機序や副作用

外部からの刺激によって起こるアレルギー反応は、発症してからの治療だけでなく、発症する前に予防する方法もあります。
特に気管支喘息においては発作を予防することが大切とされており、この時に使用される長期管理薬の1つにロイコトリエン受容体拮抗薬があります。
今回は喘息の長期管理薬として使われることの多いアレルギー予防薬ロイコトリエン受容体拮抗薬の種類と、作用機序や副作用について解説していきます。
アレルギーを上手にコントロールするためにも、ぜひ参考にしてください。
アレルギー予防薬ロイコトリエン受容体拮抗薬とは
アレルギー予防薬として使用されるロイコトリエン受容体拮抗薬はLTRAとも呼ばれ、体内のアレルギー反応を抑えて気管支を拡張したり、咳の発作を予防したりする作用があるほか、アレルギー性鼻炎に使用されるケースもある薬剤です。
ロイコトリエン受容体拮抗薬の作用機序
喘息は身体のアレルギー反応が引き金となり、気管支などが炎症を起こして気道が狭くなることで起きる咳などの呼吸症状で、原因物質の1つであるロイコトリエンが気管支内のロイコトリエン受容体に作用すると気管支を収縮させて気道を狭めます。
このような症状に対してロイコトリエンの働きを阻害するロイコトリエン受容体拮抗薬を使用することで、気管支を広げて息苦しさや咳の発作を予防します。
それに加え、粘膜における抗炎症作用や過敏性抑制作用があることから、アレルギー性鼻炎の治療に使用され、抗ヒスタミン薬では改善されない鼻づまりにも有効なのがロイコトリエン受容体拮抗薬なのです。
このような抗アレルギー作用があるロイコトリエン受容体拮抗薬ですが、起きた喘息発作を鎮める作用はないため、喘息発作を抑えるには別に発作治療薬を使用する必要があります。
また、ロイコトリエン受容体拮抗薬は、現在最も有効性の高い薬剤とされていますが、効果に個人差があることや、効果の判明までに数日~2週間ほどの継続使用が必要になるといった特徴があります。
ロイコトリエン受容体拮抗薬の一覧
ロイコトリエン受容体拮抗薬に分類される薬剤を、以下の一覧にまとめました。
有効成分 | 薬剤名 |
---|---|
プランルカスト水和物 | オノン |
モンテルカストナトリウム | シングレア、キプレス |
このように、ロイコトリエン受容体拮抗薬には、プランルカスト水和物とモンテルカストナトリウムの2種類の有効成分があります。
これら薬剤はいずれも処方薬として取り扱われており、市販では販売されていません。
ロイコトリエン受容体拮抗薬のプランルカスト水和物とは
ロイコトリエン受容体拮抗薬に分類されるアレルギー予防薬「プランルカスト水和物」には、先発医薬品として小野薬品工業のオノンカプセル112.5mgとオノンドライシロップ10%といった製品があります。
また、後発医薬品としては、東和薬品や日医工など複数の製薬会社から、ドライシロップ剤、カプセル剤、散剤が「プランルカスト」の名称で販売されています。
ロイコトリエン受容体拮抗薬プランルカストの効果
ロイコトリエン受容体拮抗薬のプランルカスト水和物は、気道の収縮や粘膜のむくみを抑制する作用があることから、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の治療に用いられます。
なお、気管支喘息に対しては「発作を予防するための長期管理薬」として位置づけられており、急な咳や発作を止めることはできません。
ロイコトリエン受容体拮抗薬プランルカストの用法・用量
プランルカスト水和物を主成分とするオノンカプセル112.5mgの場合、成人であれば、1回2カプセルを1日2回(朝食後と夕食後)に分けて服用します。
ただし、高齢者では副作用のリスクを考慮し、1回1カプセルを1日2回に減量するなど、用量の調整が必要となります。
一方、オノンドライシロップ10%は小児に対して使用され、プランルカスト水和物として体重1kgあたり1日7mgを、朝食後と夕食後の2回に分けて服用します。
この用量は、体重のほか、年齢や症状に応じて増減されることがありますが、1日あたりの最大用量は体重1kgあたり10mgまでとされています。
ロイコトリエン受容体拮抗薬プランルカストの副作用
プランルカスト水和物の主な副作用は以下の通りです。
- 消化器症状:吐き気や下痢、腹痛など
- 精神・神経症状:頭痛や眠気、めまいなど
- 皮膚症状:発疹やかゆみ、蕁麻疹など
まれに、以下のような重篤な副作用を引き起こす可能性があります。
- アナフィラキシー
- 血小板・白血球の減少
- 横紋筋融解症
これらに伴い、呼吸困難や全身の倦怠感、手足の筋肉痛といった初期症状が現れた場合は、すぐに医師や薬剤師に相談してください。
ロイコトリエン受容体拮抗薬プランルカストの禁忌
ロイコトリエン受容体拮抗薬のプランルカスト水和物は過敏症の方と妊婦の使用は禁忌であり、長期ステロイド療法を受けている患者さんや授乳婦、小児までの子ども、高齢者は注意して使用する必要があります。
飲み合わせに関しても、肝薬物代謝酵素に関する薬剤や薬物代謝酵素を阻害する薬剤、イトラコナゾール、エリスロマイシンは相互作用によって薬剤の血中濃度が上がり、副作用のリスクが高くなるため注意しなければなりません。
ロイコトリエン受容体拮抗薬のモンテカルストとは
ロイコトリエン受容体拮抗薬に分類されるアレルギー予防薬「モンテルカストナトリウム」は、先発医薬品として以下の製品が販売されています。
製薬会社名 | 製品名 |
---|---|
杏林製薬 | ・キプレス細粒4mg ・キプレスチュアブル錠5mg ・キプレス錠5mg/10mg ・キプレスOD錠10mg |
オルガノン | ・シングレア細粒4mg ・シングレアチュアブル錠5mg ・シングレア錠5mg/10mg ・シングレアOD錠10mg |
また、後発医薬品としては、キョーリンリメディオや日医工など複数の製薬会社から、モンテルカストを成分名とした錠剤やOD錠、チュアブル錠、細粒が販売されています。
ロイコトリエン受容体拮抗薬モンテカルストの効果
ロイコトリエン受容体拮抗薬のモンテルカストナトリウムには、気道や鼻粘膜の炎症を抑え、気道を広げる作用があります。
そのため、気管支喘息の治療において喘息発作を起こりにくくする長期管理薬や、鼻水・鼻詰まりといったアレルギー性鼻炎の治療に使用されます。
ロイコトリエン受容体拮抗薬モンテカルストの用法・用量
モンテルカストナトリウムは、治療対象(気管支喘息/アレルギー性鼻炎)や年齢によって用法・用量が異なります。
例えば、キプレス錠を成人の気管支喘息の治療に使用する場合には、通常10mgを1日1回就寝前に服用しますが、アレルギー性鼻炎の場合は5〜10mgを1日1回就寝前に服用します。
これは、水がなくても飲めるOD錠の場合でも同じです。
小児がロイコトリエン受容体拮抗薬をアレルギー予防に使用する時には、細粒かチュアブル錠を使用します。
キプレス細粒は1歳以上6歳未満の小児の気管支喘息の長期管理薬として4mgを1日1回就寝前に服用し、6歳以上の小児の気管支喘息であればキプレスチュアブル錠5mgを1日1回就寝前に服用します。
ロイコトリエン受容体拮抗薬モンテカルストの副作用
モンテルカストナトリウムの主な副作用は、むくみや頭痛、眠気、下痢、吐き気などです。
また、ごく稀にアナフィラキシーや血管浮腫、肝炎、中毒性表皮壊死融解症、血小板減少などの重篤な副作用を引
き起こす可能性があります。
これらに伴い、呼吸困難や全身倦怠感、発熱、鼻血などの初期症状が現れた場合は、すぐに医師や薬剤師に相談してください。
ロイコトリエン受容体拮抗薬モンテカルストの禁忌
妊娠中の方や新生児は、治療の有用性が危険性を上回ると判断された場合に限り、モンテルカストナトリウムを使用します。
これに加えて、授乳婦や乳児以上の子どもに関しても注意して使用しなければならないとされています。
飲み合わせに関しては、抗けいれん薬のフェノバルビタールと一緒に使用するとモンテルカストナトリウムの作用が弱くなる可能性があるため、併用には注意が必要です。
ロイコトリエン受容体拮抗薬以外の長期管理薬
喘息の発作を起こりにくくする長期管理薬には、ロイコトリエン受容体拮抗薬以外にも多くの種類があります。
まず、長期管理薬の中で基本治療として用いられるのは吸入ステロイド薬です。
これに加えて、長時間作用性抗コリン薬や長時間作用性β2刺激薬といった吸入薬、そしてこれら複数の薬剤が合わさった配合剤吸入薬が選択されることもあります。
長期管理薬の飲み薬には、これまでお話してきたロイコトリエン受容体拮抗薬、長時間作用性β2刺激薬、経口ステロイド薬があります。
中でも長時間作用性β2刺激薬には、ホクナリンテープという貼付薬があるのが特徴と言えるでしょう。
さらに、喘息の気道炎症の原因に作用する抗体医薬と呼ばれる注射薬もあり、医療機関での注射や自己注射で2〜8週間に1回投与するタイプの薬剤もあります。
これらの長期管理薬は、症状がない時でも継続して使用することが基本です。
継続的に使用することで、気道の炎症を抑え、喘息発作の頻度や重症度を低下させることができます。
発作治療薬を併用しながら、総合的に喘息をコントロールしていきましょう。
ロイコトリエン受容体拮抗薬でアレルギー予防を
アレルギー予防薬のロイコトリエン受容体拮抗薬には、プランルカスト水和物を配合したオノンと、モンテルカストナトリウムを配合したキプレス、シングレアの2種類があります。
これらの薬剤は、喘息の発作を起こりにくくする長期管理薬として、または鼻詰まりといったアレルギー性鼻炎の治療薬としても使用されています。
剤型は様々な種類があり、カプセル剤・錠剤・OD錠は成人用、チュアブル錠・散剤は小児用に分類されており、用量も気管支喘息とアレルギー性鼻炎で異なるのが特徴です。
思わぬ副作用を避けるためにも、処方された本人以外の使用は控えるようにしてください。