咳は喉を正常に保つための身体の反応ですが、様々な原因があり、その対処法は原因によって異なります。
さらに長引くと苦しく辛いだけではなく、他の病気が要因となっていることも考えられるため放置は厳禁です。
今回は咳止めと呼ばれる鎮咳薬の中の中枢性鎮咳薬のコデインの効果や副作用について解説していきます。
コデインは強い咳止めである反面、依存を引き起こしたり、かえって症状を悪化させたりするリスクがある薬剤でもあるので、安全に使用するためにも正しく理解していくことが大切です。
中枢性鎮咳薬コデインとは
咳は細菌やウイルス、痰などを体外へ排出しやすくする生体内防御反応ですが、激しい咳や長引く咳は体力を消耗させたり、不眠を引き起こしたりするため、咳を鎮める治療薬が処方されます。
このような時に使用される薬剤の1つが鎮咳薬で、喉が異物を感じた時に脳が反応することで起きる咳を、喉の反応や脳の反射に働きかけて鎮める効果があります。
鎮咳薬はその作用や成分によっていくつの種類に分類されていますが、ここでは中枢性鎮咳薬に分類されるコデインリン酸塩水和物が主成分のコデインを解説していきます。
各製薬会社からコデインリン酸塩散やリン酸コデイン散といった異なる名前の商品が販売されていますが、これらは同じ成分を含む鎮咳薬です。
コデインの効果
コデインはオピオイド受容体に作用して神経伝達物質を遊離することで、咳中枢の活動を落ち着かせて咳を鎮める薬剤です。
このような働きを持つコデインは中枢性鎮咳薬に分類され、痰が絡んでいない乾いた咳に効果を示すのが特徴です。
中枢性鎮咳薬であるコデインは強い鎮咳効果が期待できる一方、呼吸がしにくくなる呼吸抑制という副作用を引き起こしたり、長期的に使用すると依存性が出たりする可能性がある薬剤です。
そのため、医師の指示を越える継続的な使用や大量に薬剤を飲むようなことは避けなければなりません。
コデインの副作用
コデインの化学構造はモルヒネと似ていることから、麻薬性の中枢性鎮咳薬に分類されており、長期服用を続けたり、大量に使用したりすると依存症を引き起こす危険性があります。
コデインの場合は散剤であれば濃度1%以下のものは家庭内麻薬に分類されるため、麻薬の規制対象外となりますが、オピオイド受容体に作用して多幸感を引き起こす物質であり、近年問題となっているオーバードーズの危険性が示唆されている薬剤でもあります。
このようなことからも薬物依存や退薬症候の初期症状である、あくびや頭痛、筋肉関節痛などの症状が見られた時には速やかに医師の診断を受けてください。
他にもコデインの副作用として不整脈や血圧変動、便秘、発疹などが現れることがあります。
眠気やめまいも起きやすいので、中枢性鎮咳薬を使用中の乗り物や機械の運転・操作は控えてください。
また、重篤な副作用には薬物依存や呼吸抑制、錯乱、無気肺、気管支痙攣、麻痺性イレウスといった症状の報告もあります。
このことからもコデイン使用中に体調の異変が現れた時には、速やかに医療機関を受診しましょう。
コデインの禁忌
気管支喘息の発作中にコデインを使うと、呼吸抑制の副作用によって症状が悪化する恐れがあるため、使用してはいけません。
加えて、子どもも呼吸抑制の副作用が現れやすいことから使用は禁止です。
他にも、急性アルコール中毒や重篤な肝機能障害、ストリキニーネ中毒をはじめとする様々な病気において、コデインの使用は禁忌となっています。
このようなことからも持病を抱えている場合には、コデインを服用する前に必ず医師や薬剤師に相談するようにしてください。
また、中枢抑制剤やフェノチアジン系薬剤、三環系抗うつ薬などの複数の薬剤で相互作用の影響があります。
アルコールも副作用を出やすくしてしまうことから、コデインを服用中は飲酒を控えるようにしましょう。
コデインの市販薬
コデインが配合されている市販薬には、アネトンせき止め錠やアネトンせき止め液があります。
どちらも12歳以上から使用できる薬剤ですが、授乳中の使用は禁止されています。
また、処方薬のコデインと同じく麻薬性の薬剤であるため、使用上の注意を守り正しく使用することが大切です。
コデイン以外の鎮咳薬と種類
ここまで中枢性鎮咳薬のコデインを中心に解説してきましたが、コデイン以外にも鎮咳薬は存在します。
ここではコデイン以外の麻薬性中枢性鎮咳薬と、それ以外の非麻薬性中枢性鎮咳薬、末梢性鎮咳薬を紹介していきます。
麻薬性中枢性鎮咳薬
コデインが属する麻薬性中枢性鎮咳薬には、他にジヒドロコデインリン酸塩を主成分とする鎮咳薬があり、コデインの主成分であるコデインリン酸塩水和物よりも、ジヒドロコデインリン酸塩の方が約1.4倍の強い咳止め効果があると言われています。
ジヒドロコデインリン酸塩を配合した鎮咳薬は錠剤や散剤などの剤型に加え、他の成分も含有したフコスデ配合錠などの薬剤があります。
どちらも麻薬性の鎮咳薬なので、依存症や呼吸抑制の副作用のリスクがあるため注意して使用しましょう。
非麻薬性中枢性鎮咳薬
非麻薬性中枢性鎮咳薬は咳中枢の働きの抑制に加え、気管支平滑筋を緩ませて交感神経を活発化させることで気道を広げて咳を止める薬で、麻薬性中枢性鎮咳薬と同じく痰が絡まない乾いた咳に使用されます。
非麻薬性中枢性鎮咳薬にはアストミン、フスタゾール、メジコン、リフヌアといった製品があり、それぞれ特徴は少しずつ異なります。
錠剤、散剤、シロップ剤と剤型が豊富で、特に小児用に作られたシロップ剤は生後3ヵ月から服用できるものや、鎮咳薬に加えて気道分泌促進薬を配合した配合剤などの製品もあります。
副作用については麻薬性中枢性鎮咳薬よりも少ないとされていますが、眠気をもよおしやすいため、服用後の乗り物の運転や危険を伴う機械操作は控えましょう。
また、なかには呼吸抑制やアナフィラキシーの報告がある薬剤もあるので、体調に異変を感じた時は速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
末梢性鎮咳薬
末梢性鎮咳薬は咳中枢ではなく、気管や肺などの抹消に働きかけて咳を鎮める薬剤であり、痰の絡んだ湿った咳に効果を発揮します。
末梢性鎮咳薬には去痰薬や気管支拡張薬、漢方薬といった様々な種類があるのが特徴です。
去痰薬は痰や鼻水の粘度を下げ、ウイルスや細菌などの病原体や異物を体外へ排出する働きを促進する薬剤です。
痰絡みは咳を引き起こす要因となるため、去痰剤を使用することは咳を鎮めることに繋がらります。
去痰薬には、喀痰溶解薬のムコダイン、気道粘液分泌促進薬のムコソルバンなどの薬剤があり、去痰をして気管支喘息や咽頭炎の治療以外にも、慢性副鼻腔炎の排膿にも使用されます。
気管支拡張薬はその名の通り、炎症を起こして狭くなった気管支を広げて咳や息苦しさを改善する薬剤です。
錠剤やドライシロップなどの内服薬に加え、エアゾール剤や吸入薬、貼付薬などの外用薬もあり、効果が持続する時間によって長時間型・中時間型・短時間型の3種類に分類されています。
他にも咳を鎮めるために麦門冬湯や桔梗湯などの漢方薬が処方されることもあります。
麦門冬湯はバクモンドウやコウベイ、ハンゲなどの成分が配合された漢方薬で、乾いた咳や風邪の後に残る咳に使用されることが多い薬剤です。
桔梗湯はカンゾウとキキョウが配合された漢方薬で、喉の腫れと咳が同時にみられた時に使用される薬剤です。
このような気管や肺の症状を改善することで咳を鎮める、去痰薬・気管支拡張薬・漢方薬といった末梢性鎮咳薬は依存性のリスクがほとんどないため、中枢性鎮咳薬よりも使用頻度は高くなっています。
中枢性鎮咳薬が効かない咳
風邪を引いた後に長く残る咳には、咳喘息やアトピー喘息、副鼻腔気管支症候群などが原因とされ、中でも咳喘息であるケースが多いとされています。
咳が長期間続く咳喘息は気管が炎症を起こして気道が狭くなることで発症する病気で、ハウスダストや室内外の温度差などが刺激となって、数ヵ月~1年以上も乾いた咳が続くこともあります。
咳が辛いためにコデインなどの咳止め効果の強い中枢性鎮咳薬を使用したくなりますが、気管支が狭くなっていることが主な要因のため、副作用で気道を狭めてしまう中枢性鎮咳薬では効果がないばかりか、逆効果になることもあります。
このような理由からも、咳喘息は気管を広げる作用を持つ気管支拡張薬を使用した治療が基本です。
咳喘息は気管支喘息の前段階とも言われ、咳喘息を放置した約3割の人が気管支喘息になってしまったというデータもあるので、長引く咳は放置せずに医療機関での治療を受けることをおすすめします。
中枢性鎮咳薬コデインは効き目が強いが依存性に注意が必要
中枢性鎮咳薬コデインは脳のオピオイド受容体に作用して咳中枢の活動を抑える働きを持つ鎮咳薬です。
コデインの効き目は強く、高い咳止め効果が期待できる反面、依存性や呼吸抑制などの副作用を引き起こす可能性もあるので注意が必要です。
特に気管支喘息や咳喘息といった気管が狭まる病気に使用すると、かえって症状を悪化させる危険性があるので避けてください。
鎮咳薬にはコデインをはじめとする麻薬性中枢性鎮咳薬、アストミンなどの非麻薬性中枢性鎮咳薬に加え、気管や肺に作用して咳を鎮める末梢性鎮咳薬の去痰薬や気管支拡張薬、漢方薬といった薬剤があります。
咳が止まらないからと短絡的に鎮咳薬を使用するのではなく、症状とその要因をよく観察し、それぞれの長所と短所を踏まえた薬剤の選択をする必要があると言えるでしょう。