減感作療法の皮下注射にはどんな効果がある?治療期間や費用と舌下免疫療法との違い

今や国民病とも言われるようになった花粉症やハウスダストといったアレルギーは、目薬や点鼻薬などの外用薬と抗アレルギー薬などの内服薬を使用した対処療法が取られることが多いですが、病気の根本を改善する治療ではないため、薬剤の効果が切れるとまた症状が現れてしまうというデメリットがあります。
このようなアレルギー疾患を根本から治療できるのが、減感作療法における皮下注射免疫療法や舌下免疫療法です。
今回は減感作療法における皮下注射免疫療法の特徴や治療期間、費用について解説していきます。
抗アレルギー薬が飲めない方やアレルギー疾患を根本から治療したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
減感作療法の皮下注射とは
減感作療法(げんかんさりょうほう)は、アレルゲンの抗原成分を抽出した治療エキスを少量ずつ体内に取り入れて身体を慣れさせ、免疫が過剰に反応することで起こるアレルギー反応を起こりにくい状態へと体質を改善していく治療法です。
ここでは減感作療法で使用されることの多い、ヒスタグロビンという注射薬を中心に特徴を解説していきます。
減感作療法の皮下注射の効果
減感作療法の皮下注射で使用するヒスタグロビンは、アレルギー反応に関わる免疫グロブリンと、かゆみや炎症といったアレルギー症状における刺激物質であるヒスタミンが含まれています。
これにより、ヒスタグロビンを継続的に投与することでアレルギー反応の阻害に加えて、ヒスタミンに対する耐性を得られることから、アレルギー体質の改善に繋がるとされています。
このような作用を持つヒスタグロビンは、スギ花粉やダニエキスなどの特定のアレルゲンを体内に取り入れる舌下免疫療法とは違い、すべてのアレルゲンによるアレルギー反応に対して効果を発揮するのが特徴です。
さらにアレルゲン自体を直接体内に取り入れるわけではないので、アナフィラキシーをはじめとする副作用が少ないのもメリットの1つとされています。
減感作療法の皮下注射の治療期間と費用
ヒスタグロビンによる減感作療法の皮下注射は、1度だけではほとんど効果が得られないことから継続して治療していくことが大切です。
週に1~2回の皮下注射によるヒスタグロビンの投与を合計6回行うため治療期間は1ヵ月前後ですが、十分な効果が得られない場合は2クール目として、さらに6回追加投与を行います。
このような理由からも、減感作療法による皮下注射は花粉の飛散が始まる1~2ヵ月前から始めるとよいでしょう。
また、効果を持続させるために治療後、3~4ヵ月に1回の追加投与が推奨されています。
減感作療法のヒスタグロビンの皮下注射は健康保険の適用となる治療なので、3割負担であれば初診で約1,200~1,500円、再診は約500~600円となり、負担額は1クールで合計約4,000円です。
減感作療法の皮下注射のデメリット
減感作療法の皮下注射ヒスタグロビンを打つ時に注意したいデメリットを4つ紹介していきます。
減感作療法の皮下注射を打つ前に必ずチェックしておきましょう。
ヒスタグロビンを使用できない方もいる
減感作療法の皮下注射ヒスタグロビンは、次のような方は使用できないとされています。
- 喘息の激しい発作がある方
- 体力が低下し衰弱している方
- 月経直前・月経中の方
- 妊娠中の方
- 過去にヒスタグロビンでショックを起こした方
これらの方は症状を悪化させる危険性があるため、ヒスタグロビンを注射することができません。
月経の問題もあることから、ヒスタグロビンの減感作療法は男性の方が取り組みやすいと言えるでしょう。
女性が治療に取り組む場合は、月経を考慮した治療スケジュールを組むことが重要です。
副作用のリスクがある
ヒスタグロビンの副作用として眠気、めまい、頭痛、嘔吐、蕁麻疹、一時的な鼻症状の悪化といった症状が現れることがあります。
また、ショックや血圧低下、チアノーゼ、呼吸困難などの重大な副作用の報告もありますが、アレルゲン自体を体内に投与するアレルゲン免疫療法と比較すると、その頻度はごく稀です。
万一、体調に違和感が現れた時には医師や薬剤師に相談するようにしてください。
ワクチン接種に影響が出ることがある
ヒスタグロビン皮下注射は、麻疹、おたふくかぜ、風疹、水痘といった生ワクチンの効果を下げてしまう可能性があります。
そのため、ヒスタグロビン皮下注射を打った後は、3~4ヵ月の期間を空けないと生ワクチンを接種できません。
反対に生ワクチンを接種した後にヒスタグロビン皮下注射を打つ場合も、2週間は間隔を空ける必要があります。
一定期間は献血できない
ヒスタグロビン皮下注射は生物製剤であるため、感染症の可能性を考慮して、接種後3ヵ月は献血ができません。
このことを受けて、ヒスタグロビンによる治療を行う時には同意書に署名する必要があります。
しかしながら、1967年にヒスタグロビン皮下注射が発売されて以来、一度もヒスタグロビンが原因となる感染症の報告はないとされています。
減感作療法の皮下注射で併用されるノイロトロピン注射
減感作療法における効果を高めるためにヒスタグロビン皮下注射と併用して、ノイロトロピンという注射を使用することがあります。
ノイロトロピン注射はウイルスを接種したウサギの炎症皮膚組織から抽出したエキスを使用したアレルゲンの放出を抑える作用を持つ注射薬で、花粉症のくしゃみ、鼻水、目の痒みに加え、湿疹や蕁麻疹といった皮膚疾患にも効果を発揮します。
また、ヒスタグロビンとは異なった作用機序であることから、併用することで相乗効果が期待できるメリットもあります。
ノイロトロピンもヒスタグロビンと同様に週1~2回の注射を合計6回受けるのが基本です。
健康保険が適用されるため、3割負担の方であれば初診は1回約1,000円、再診では1回約500円の費用がかかります。
副作用には眠気、ほてり、吐き気、注射部位の腫れなどが現れる可能性があり、重篤な副作用としてごく稀にアナフィラキシーや呼吸困難などを引き起こす恐れもあります。
加えて、安全確認が取れていないことから、妊娠中や授乳中のノイロトロピンの使用は禁止されています。
アレルギー症状が強い場合にはヒスタグロビンとノイロトロピンの併用を検討するとよいでしょう。
減感作療法の皮下注射と舌下免疫療法の違い
ここまでお話してきた皮下注射の他に、減感作療法には舌下免疫療法と呼ばれる治療法があります。
舌下免疫療法は、各アレルゲンから抽出したエキスで作った薬を舌下から少しずつ体内に吸収させて、身体を慣らしてアレルギー症状を緩和していく治療法です。
皮下注射と同じくアレルギー疾患を根本から治療できるのが特徴です。
舌下免疫療法のメリット
舌下免疫療法は、薬剤を舌下においてしばらくしてから飲み込むという簡単な治療法であり、初回の服用こそ医師の監督下で行うことが決められていますが、その後は自宅で行えます。
このように簡単な治療法であることから、5歳の子どもから治療を受けることが可能です。
また、アレルゲンに対する耐性を高める治療法のため、治療後も長期的に効果が持続するとされています。
さらに保険が適用され、費用負担が少ない点も舌下免疫療法のメリットです。
舌下免疫療法のデメリット
舌下免疫療法の一番のデメリットは、治療期間が長いことです。
舌下免疫療法の治療期間は最低でも3年は必要とされ、4~5年間行うことが推奨されています。
通院は最初の約半年~1年は2週間に1回、副作用の問題がないことを確認できたら月1回になりますが、薬剤は毎日欠かさず投与を続けていきます。
もし初期に1週間飲み忘れた場合には最初からやり直しになってしまうこともあるため、忘れないことが大切です。
また、減感作療法の皮下注射のように治療を受けられない方もいます。
例えば、喘息の激しい発作がある方、がんなどの免疫系の病気を患っている方は舌下免疫療法を受けられません。
加えて、減感作療法の皮下注射はアレルゲンの種類を問わず治療を行うことができましたが、舌下免疫療法の場合は特定のアレルゲンの薬剤を使用するため、対象のアレルギーでないと治療は行えません。
さらに薬剤である以上、副作用のリスクもあります。
舌下免疫療法のスギ花粉用の治療薬であるシダキュアを例にすると、口内の腫れやかゆみ、喉の不快感といった副作用があり、稀にアレルギー症状を悪化させることもあります。
副作用の出現率は高くないとされていますが、体調に異変を感じた時には医師や薬剤師に速やかに相談するようにしてください。
減感作療法の皮下注射はアレルギー体質の改善が期待できる
アレルギー体質の改善が期待できる減感作療法による皮下注射は、ヒスタグロビンやノイロトロピンといった薬剤を使用します。
ヒスタグロビンは身体のアレルギー反応を抑える作用を、ノイロトロピンはアレルゲンの放出を抑える作用を持っており、併用することで相乗効果を発揮します。
減感作療法の皮下注射では週1~2回の注射を合計6回受けるのが基本であり、その後も3~4ヵ月に1回注射を受けることで効果が持続するとされています。
減感作療法は皮下注射の他にも、舌下に薬剤を入れてアレルゲンに身体を慣らしてアレルギー反応を抑えていく舌下免疫療法があります。
治療期間が3年以上と長いのがデメリットですが、注射が苦手な場合には検討してみるとよいでしょう。
減感作療法で症状が改善されない場合は、抗アレルギー薬で症状を抑えていく必要があります。
お薬ネットでも花粉症をはじめとする抗アレルギー薬の取り扱いがありますので、辛い症状でお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。