脳の慢性疾患であるてんかんは、抗てんかん薬を使用しながら発作をコントロールして治療する病気です。
抗てんかん薬には様々な種類があり、その特徴もそれぞれ異なります。

そこで今回はヒダントイン系に分類される抗てんかん薬について解説していきます。
ヒダントイン系の薬剤の種類や効果に加えて、てんかんに関する情報もお伝えしますので、病気や薬剤に対して疑問をお持ちの方は参考にしてください。

てんかんとは

ヒダントイン系抗てんかん薬の解説を始める前に薬剤の特徴が理解しやすいよう、まずはてんかんという病気について簡単に触れていきます。

てんかんは大脳の神経細胞が出す電気信号が激しく乱れることによって起きる病気で、てんかんがある人は日本国内だけで約100万人いると推定されています。
てんかんは全年齢に関係する病気ですが、その8割は18歳以下で発病するというのが特徴です。

また、てんかんの発作は全般発作と部分発作に大別されます。
全般発作は脳全体の過活動によって起き、数秒間ボーっとする欠伸発作、身体が硬く突っ張る強直発作、ガクガクと痙攣が起きる間代発作などがあり、意識が最初からなくなることが特徴としてあげられます。

部分発作は脳の一部から起こる発作で発作の場所によって、発作中も意識がある単純部分発作、意識障害が起きる複雑部分発作に分類され、さらに部分発作から全身発作に進展するケースもあります。

これまでてんかんは一生治らない病気と言われてきましたが、治療可能なケースも増えてきました。
例えば、特発性部分てんかんであればほとんどの人が治療を始めてから2年程で発作が止まったというデータもあります。

最近では、外科治療、迷走神経刺激療法、食事療法など複数の方法で治療を進めていきますが、やはり治療の中心となるのは抗てんかん薬を使用した薬物療法です。
豊富な種類の中から症状や身体に合った薬剤を選択し、必要があれば複数の薬剤を使用するケースもあります。

ヒダントイン系抗てんかん薬とは

抗てんかん薬にはT型Caチャネル阻害薬やベンゾジアゼピン系、パルビツールなど様々な種類がありますが、ここではNaチャネル阻害薬に分類されるヒダントイン系抗てんかん薬について解説していきます。

ヒダントイン系抗てんかん薬の効果

てんかんは大脳の神経細胞が過剰に興奮しすることで発作を起こすため、抗てんかん薬でこの興奮を抑制して発作を抑えます。

なかでも古くから使われているヒダントイン系抗てんかん薬は、Naチャネルを阻害して神経の興奮伝達に関わるナトリウムイオンの流入を抑える作用を持つNaチャネル阻害薬に分類される薬剤です。
ヒダントイン系抗てんかん薬という名前は、成分の化学構造にヒダントイン骨格を持つことが由来となっています。

ヒダントイン系抗てんかん薬の副作用

ヒダントイン系抗てんかん薬の主な副作用は、めまいや運動失調などの精神神経症状、貧血などの血液障害、吐き気などの消化器症状があり、特定の薬剤の使用が原因となって歯肉が増殖するヒダントイン歯肉増殖症が現れる可能性もあるので注意が必要です。
さらに重篤な副作用として、ごく稀に重い皮膚症状や重い肝臓障害、腎機能低下、間質性肺炎、悪性症候群、悪性リンパ腫などの報告もあります。

また、ヒダントイン系抗てんかん薬は、離脱症状と中毒症状を引き起こす恐れがある薬剤です。

離脱症状は薬剤の血中濃度が急激に下がることが原因となって起きる症状で、不安や不眠、幻覚などが現れることがあります。
そのため、自己判断で薬剤を減量したり、勝手に中止したりすることはやめてください。

一方、薬剤の量が多すぎたり、他の薬剤の影響によって効果が増強されることにより、中毒症状を引き起こす可能性もあります。
震えやろれつが回らない、物が二重に見えるなどの体調の変化が起きた時は中毒症状が疑われるので、速やかに医療機関を受診するようにしてください。

ヒダントイン系抗てんかん薬の種類

ヒダントイン系抗てんかん薬は、有効成分の違いによってさらに分類されます。
ここでは、ヒダントイン系抗てんかん薬に分類される有効成分フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム、エトトインの商品について解説します。

フェニトイン

フェニトインを主成分とするヒダントイン系抗てんかん薬の錠剤は、アレビアチン錠25mg、アレビアチン錠100mg、ヒダントール錠25mg、ヒダントール錠100mgです。
これに加えて、散剤のアレビアチン散10％と注射剤のアレビアチン注250mgがあります。
つまり、商品の名前こそ違いますが、アレビアチンとヒダントールは同じフェニトインを主成分とする薬剤なのです。

また、過去にはヒダントール散10％もありましたが、経過措置期間が満了となり、販売中止となりました。
フェニトインは、自律神経発作、精神運動発作を含む、てんかんの強直間代発作やジャクソン型発作、焦点発作、大発作、痙攣発作などの治療に使用されますが、全身発作の脱力発作と欠伸発作には効果がないとされています。

副作用として、ヒダントイン歯肉増殖症や多毛が現れやすいので注意してください。

ホスフェニトインナトリウム

ホスフェニトインナトリウムを主成分とする抗てんかん薬は、ノーベルファーマのホストイン静注750mgで、錠剤などの飲み薬はありません。

ホスフェニトインナトリウムは、意識障害時や頭部外傷時、脳外科手術時のてんかん発作の発現抑制に加え、てんかん重積状態に用いられます。
またフェニトインを服用しているてんかんの代替療法として一時的に使用するという使い方をされることもあります。

ホスフェニトインナトリウムの副作用として発熱や眼振などが現れることがあるので注意しましょう。

エトトイン

エトトインを主成分とするヒダントイン系抗てんかん薬の商品は、住友ファーマのアクセノン末のみで、てんかんの強直間代発作や大発作、痙攣発作、全般痙攣発作に効果を示します。
肝臓疾患や甲状腺機能低下症、血液障害がある方はエトトインを慎重に使用する必要があり、他の薬剤との相互作用も起こしやすいので飲み合わせにも注意しなければなりません。

てんかんの時に飲んではいけない薬

ここまでてんかんの治療薬であるヒダントイン系抗てんかん薬について解説してきましたが、一方でてんかんの方は飲まない方がよいとされている薬剤も存在します。
ここからは、てんかんの方が注意したい薬剤や食べ物を紹介していきます。

睡眠導入剤

睡眠導入剤の多くは抗てんかん薬にも使用されることがあるベンゾジアゼピン系の成分が配合されています。
ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬を服用中にベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤を服用することは副作用のリスクが高まるために避けるべきですが、そうでなくても依存症の危険性があることから医師の判断がない場合には飲むべきではないとされています。

抗ヒスタミン薬

総合風邪薬や花粉症などのアレルギー薬に使用されることの多い抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン受容体に働きかける作用があることから、てんかん発作が起きやすくなると言われています。
すべての抗ヒスタミン薬でてんかん発作を引き起こすわけではありませんが、中枢移行の強いタイプの薬剤で特に注意が必要です。

これらのことからも抗ヒスタミン薬は勝手に使用せず、服用前に必ず医師に相談するようにしましょう。

アルコール

てんかんがある方は飲酒を控えるべきです。
アルコールは脳に直接作用するため発作が起きやすくなったり、睡眠を浅くしてしまうことから睡眠不足による発作のリスクも高まったりすることがあるからです。

さらに薬剤もアルコールも肝臓で代謝されるため、相互作用による悪影響も懸念されます。
これらのことからも、てんかんがある方は禁酒をするのが望ましいです。

もし、お酒を飲んでしまったとしても勝手に薬剤を中止してはいけません。
抗てんかん薬の使用に不安がある場合には、医師または薬剤師に相談して指示を仰ぎましょう。

グレープフルーツ

ヒダントイン系抗てんかん薬では問題ありませんが、他のてんかんの治療薬であるカルバマゼピンとグレープフルーツを一緒に食べると、薬剤の吸収速度が上がって血中濃度が乱高下してしまいます。
これはグレープフルーツジュースやゼリーなどでも同じですが、薬剤を飲む直前でなければ問題ないので、食べるタイミングに注意してください。

ヒダントイン系抗てんかん薬はNaチャネル阻害薬

脳の慢性疾患であるてんかんは大脳の電気信号が過剰になって乱れることで発作が出る病気で、身体が突っ張ったり、ガクガクと痙攣が起きたりといった症状が現れます。
ヒダントイン系抗てんかん薬は、神経の興奮伝達に関わるナトリウムイオンの流入をNaチャネルを阻害して、発作を抑制する効果を持っています。

フェニトイン、ホスフェニトインナトリウム、エトトインは有効成分の化学構造にヒダントイン骨格を持つため、ヒダントイン系抗てんかん薬に分類されています。
錠剤や散剤、注射薬など様々な剤型があり、成分ごとに少しずつ適応が異なるのが特徴ですが、中毒症状や離脱症状の可能性もあることから勝手に薬剤の量を変えたり、中止したりするのはやめましょう。

また、医薬品のネット通販である「お薬ネット」では、抗てんかん薬のテグレトールやラミクタールのジェネリック医薬品であるラメズを販売しています。
てんかんは長期治療が必要な病気のため、通院の負担を感じる方も少なくありません。
病院に行くのが難しいような時には上手に通販を利用して、負担を軽減していきましょう。