片頭痛治療薬エルゴタミンが使用されなくなった理由｜エルゴタミンに替わる片頭痛の治療薬とは

適用部位

脳

悩みや症状

痛み

薬効分類

片頭痛とは

まず、エルゴタミンについて解説する前に、片頭痛について触れておきます。

片頭痛は、主に片側のこめかみを中心にズキンズキンとした痛みが起こる頭痛であることからこのような名前が付きましたが、実際には両側のこめかみ付近に痛みを感じるケースもある頭痛です。
生活に支障が出る痛みが数時間続いたり、吐き気が起きたりすることがあるのが特徴で、15歳以上の日本人の約8％に片頭痛があると言われています。

片頭痛が起きるメカニズムは完全には解明されておらず、原因は諸説あるとされています。
脳の血管が収縮した後に拡張して頭痛が起きるという考え方や、片頭痛を起こす中枢神経にある部位が刺激を受けることで片頭痛を引き起こすという考え方、三叉神経が刺激されて炎症を起こすことが原因で痛みが出るといった考え方があります。

医療機関では国際頭痛学会などの診断基準によって症状が確認され、片頭痛と診断されることで治療が始まります。
片頭痛と診断されると、一般的に片頭痛治療薬を用いた治療が行われます。

片頭痛薬エルゴタミンとは

エルゴタミンは1926年に使用され始めた片頭痛治療薬です。
初期はエルゴタミン単体で使用されていましたが、カフェインと併用することにより効果が強くなることが分かり、その後はエルゴタミンと無水カフェインの合剤が用いられるようになりました。

エルゴタミン製剤の商品一覧

有効成分エルゴタミン酒石酸塩が配合された先発薬は、日医工のクリアミン配合錠A1.0とクリアミン配合錠S0.5の2種類があり、どちらもエルゴタミン酒石酸塩とイソプロピルアンチピリン、無水カフェインを含んだ合剤であり、後発品の販売はありません。

また、過去にはジヒデルゴットという名前の薬剤もありましたが、販売中止となりました。
エルゴタミン製剤に市販薬はなく、処方薬のみの取り扱いとなっています。

エルゴタミンの作用機序・効果

エルゴタミンは広がった脳の血管を収縮させて血管周辺の炎症を緩和する効果がある薬剤で、片頭痛の原因の1つと考えられている脳の血管が収縮した後に拡張する作用を抑制する働きをします。
これにより片頭痛や緊張性頭痛、血管性頭痛による痛みを緩和させる効果があるとされています。

エルゴタミンの用法用量

クリアミン配合錠S0.5の場合は、通常成人は1回2錠を1日2〜3回服用しますが、片頭痛の前兆が見られた時には2〜4錠を頓服します。
用量は年齢や症状に応じて増減しますが、1週間に20錠を超えてはいけません。

クリアミン配合錠A1.0の場合は、通常成人は1回1錠を1日2〜3回服用し、片頭痛の前兆がある時には1〜2錠を頓服します。
こちらも用量は年齢や症状によって増減しますが、1週間に10錠を超えて服用してはいけません。

また、エルゴタミンは痛みが起こる前兆症状や痛みが出た直後に、できるだけ早く服用する必要があり、タイミングを逃すと十分な効果が得られないことがある点には注意しましょう。

エルゴタミンの副作用・禁忌

エルゴタミンの副作用として最も多いのが吐き気で、他にも食欲不振や下痢、腹痛などの消化器症状、眠気や不眠、めまいといった精神神経症状、発疹などの皮膚症状が現れることもあります。
重篤な副作用としてショックや中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、肝機能障害に加えて、エルゴタミンは麦芽アルカロイドの一種であることから麦芽中毒を引き起こすリスクもあります。

禁忌は非常に多く、一例をあげると過敏症肝機能障害、冠動脈硬化症などの病気、妊娠中、授乳中の方が当てはまり、飲み合わせについてもエンシトレルビル、レナカパビル、クラリスロマイシンをはじめとする様々な薬剤と併用禁忌となっています。
このようなことからも、エルゴタミンを使用する時には医師に持病や服用中の薬剤を正しく伝え、副作用を引き起こさないように気を付ける必要があります。

エルゴタミンが使用されなくなった理由

現在、ごく一部の症例を除いて片頭痛の治療にエルゴタミンが使用されるケースは少なくなりました。
エルゴタミンが使用されなくなった最も大きな理由は、1991年に海外で使用が開始されてから日本でも用いられるようになったトリプタン製剤の出現です。

もともとエルゴタミンは副作用の吐き気が起こりやすいうえに、頭痛が起きてからでは効果が得られにくいというデメリットがありました。
さらにエルゴタミンを常用し使用過多となることで起こる薬物乱用頭痛や、薬剤の血中濃度が低くなると起こる薬物離脱頭痛も問題となっていました。
このようなことからも、エルゴタミンと同等以上の効果が期待でき、吐き気などの副作用が起きにくいトリプタン製剤が使用されるようになっていったのです。

しかしながら、エルゴタミンには効果継続時間が長く、長期間使用しても効果が下がりにくいという特徴があるため、発作時間が48時間以上の時や頭痛の再発がある時、トリプタンに過敏症がある時などはエルゴタミン製剤が選択されることがあります。

エルゴタミンに替わる片頭痛治療薬トリプタン

エルゴタミンに替わって使用されるようになったトリプタンは、片頭痛治療薬の第一選択薬です。
トリプタンは血管収縮に関係する神経伝達物質のセロトニンに作用することで、血管収縮作用や抗炎症作用を示します。

ただし、眠気やめまいなどの副作用が現れる可能性があるため、てんかんや痙攣を起こしやすい方の使用には注意が必要です。
また、有効成分の違いによって数種類の薬剤が販売されていますが、一般的にどのトリプタン製剤も解熱鎮痛薬よりも片頭痛に対して高い効果が得られるとされています。

ここでは、トリプタン系を主成分とする片頭痛治療薬のイミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、アマージ、マクサルトの製品と特徴を紹介していきます。

イミグラン

スマトリプタンを有効成分とするイミグランはグラクソスミスクラインが販売している先発薬で、製品にはイミグラン点鼻液20、イミグラン錠50、イミグランキット皮下注3mgがあります。
後発品も東和薬品や協和薬品工業など複数の製薬会社からスマトリプタン錠50mgといった内服薬が発売されています。

イミグランは剤型が豊富なので、症状や目的に合わせて薬剤を選択できるのが特徴です。
イミグランキット皮下注3mgは自分で打つことができる注射で、イミグラン点鼻は鼻に噴霧して使用します。

ゾーミッグ

ゾーミッグはゾルミトリプタンを有効成分とする沢井製薬の先発薬で、ゾーミッグ錠2.5mgとゾーミッグRM錠2.5mgがあります。
後発品は日医工や協和薬品工業などから、ゾルミトリプタンOD錠2.5mgが発売されています。

ゾルミトリプタンは即効性が高いため、片頭痛の痛みを早く和らげることができます。
また、RM錠もOD錠も口腔内で溶ける剤型のため、水なしでも飲めるのも特徴です。

レルパックス

レルパックスは有効成分エレトリプタンを含むヴィアトリス製薬の先発薬で、レルパックス錠20mgという商品があります。
後発品は協和薬品工業からエレトリプタンOD錠20mg「アメル」、第一三共エスファや東和薬品などの複数の製薬会社からエレトリプタン錠20mgが発売されています。

エレトリプタンは作用持続時間が長く、長時間の片頭痛発作に有効となる薬剤です。
母乳への移行が少ないメリットがありますが、グレープフルーツとの食べ合わせに注意が必要です。

アマージ

アマージはナラトリプタンを有効成分とする薬剤で、先発薬にはグラクソスミスクラインのアマージ錠2.5mg、後発品には寿製薬のナラトリプタン錠2.5mg「KO」が発売されています。

ナラトリプタンは他のトリプタン製剤よりも作用時間が長いという特徴があります。
効果時間については24時間にわたる痛みの改善がみられたという報告もあり、長時間の片頭痛発作の再発防止などに効果を発揮する薬剤です。

マクサルト

マクサルトは有効成分リザトリプタンを含有する片頭痛治療薬で、先発薬にはオルガノンのマクサルト錠10mgとマクサルトRPD錠10mgがあります。
後発品は辰巳化学やヴィアトリスヘルスケアなどの製薬会社から、リザトリプタンOD錠10mgが販売されています。

マクサルトは即効性が高く、素早く効果が出るという特徴を持つ薬剤です。
小児にも使用できますが、片頭痛予防薬のプロプラノロールとは併用禁忌です。

片頭痛治療薬エルゴタミンはトリプタンの登場によって処方が減少

片頭痛治療薬エルゴタミンは長い間片頭痛の治療に用いられてきた薬剤ですが、吐き気の副作用が出やすいうえに頭痛が起きてからの使用では効果が弱くなってしまうという問題点がありました。
そのような背景もあり、トリプタンが登場してからはエルゴタミンの使用頻度は徐々に減っていきました。
発作時間が48時間以上の場合や頭痛の再発がある場合、トリプタンに過敏症がある場合などの一部の症例に限って使用されているのがエルゴタミンの現状です。

現在、片頭痛治療薬の第一選択薬となっているトリプタンには、イミグランやゾーミックなど成分が異なる様々な薬剤があります。
成分によって即効性が高かったり、長時間効果が持続したりする違いがあることから、症状や個人の状況などによって薬剤が選択されています。

医薬品のネット通販「お薬ネット」でもイミグラン50mgや、イミグランの後発品であるスミナット50mgを購入することが可能です。
医療機関を受診することが難しい場合には、手軽に購入できるお薬ネットへご相談ください。